車のスピードを抑えるために、毎年レギュレーションを変更しているにもかかわらずです。たとえば、新しいレギュレーションが「ダウンフォースを50%削る」ことになったとしましょう。このレギュレーション変更が決まった時点で、各チームが開発を進めます。開幕戦は前年度に比べてタイムが遅くなっても、シーズン中にレースをしながら同時進行で開発を進めていますから、徐々にタイムを挽回し、最終的に前年度のラップタイムを上回る結果に終わります。
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なぜこういったことが起きるのでしょうか。実はFIAでタイムを遅くするためにレギュレーションを考える人間と、チーム内でタイムを速くすることを考える人間が同じで、両方の役割を兼務しているからです。レギュレーションを決める人間はチーム関係者でないほうがいいのではと思われるかもしれませんが、トップレベルの車の専門知識と充分なキャリアがある人材を、F1の外の世界に求めるのは不可能に近いのです。ドライバーの命を預かる重要な安全対策ですから、なおさらです。ですから矛盾しているようですが、同じ人間が「タイムを遅くするアイディア」と「タイムを速くするアイディア」を同時に考えていることになり、結果的にタイムが早く回復するのです。安全対策を目的としたレギュレーション変更が同時に、エンジニアにとって新しい技術開発のきっかけ、すなわち技術課題の設定になっているといえます。大局的にみれば、F1で生まれた技術開発が自動車産業の発展に貢献しているといってもいいかもしれません。